工房は外国の若手アーティストの研修も受け入れています。陶板レリーフが人気ですが、ステンドグラスも本場のヨーロッパからわざわざ学びに来ています。

ウクライナ人のマリア・シルチェンコさんはフランスのパリ高等美術学校(通称ボザール)に留学。2018年、同大と東京藝術大学の短期交換留学で来日しました。留学終了後、「もっと陶製作技術を深めたい」と知り合いの紹介で「クレアーレ熱海ゆがわら工房」に研修依頼がありました。
2019年2月から3カ月間、工房の宿舎に滞在しながら、スタッフから陶板製作技術の指導を受け、滞在の終わりには釉薬の責任者の鈴村敦夫氏、女性スタッフを含めた4人の合同展を熱海市の由緒ある起雲閣で開催。「この素晴らしい環境にずっといたい。ここにいたらいろいろな作品を生み出せると思う」と、後ろ髪を引かれながらの帰国でした。

シルチェンコさんから工房の話を聞いて、陶板の研修を申し込んできたのがロシア人のアリサ・ニコラエヴァさんでした。彼女はパリ高等美術学校を卒業後、パリの製作工房で働いていました。環境芸術のほか、絵画、彫刻、デザインなどを勉強してきましたが、「アーティストとしてのもっと幅を広げたい」と日本の陶製作技術を身につけようと思い立ったのです。
新型コロナの影響で来日が再三延びた末に、2023年9月から3カ月間、滞在しました。
釉薬の調合や造形について、担当の鈴村敦夫氏の指導を受け、信楽の窯業技術試験場で行われた研究会にも参加し、貪欲に日本の陶製作と施釉の技術を吸収しました。彼女は帰国後、滞在中に作った作品をSNSにアップし、「工房は広く、清潔で、緑豊かな環境もすばらしい。3カ月間、1歳の娘の世話も、家事も忘れて製作に打ち込めた贅沢な日々でした」と話していました。

オーストラリアから陶製作を学びに2026年4月から1カ月間、「クレアーレ熱海ゆがわら工房」で研修を受けたのがアーティストのララ・ブリスさん。陶については休日に粘土細工を作る程度でしたが、インターネットで工房が製作した大型の陶板レリーフを見て一目ぼれ。「私もあのような大型の作品を作りたい」と申し込んできました。
工房では粘土造形の基本的から、作品の裏を削りとる「裏ぐり」の技術(粘土に量感があると窯の中で爆発するため)、施釉の方法と、スタッフのきめ細かな指導を受け、滞在中に3作品を作りました。「この工房の大型陶板レリーフ作品をいつかオーストラリアの公共空間に飾りたい」と語っていました。

ステンドグラスが本場のフランスから2026年5月から1カ月間、ステンドグラスを学びに来たのがマルジョリ・ソシさん。パリ・ステンドグラス専門学校4年生の彼女が、わざわざ日本に学びに来た理由を聞いて納得しました。
フランスではステンドグラスの仕事というと教会のステンドグラスの修復がほとんどで、アートの注文は少ないのです。彼女はステンドグラスを素材にアートを製作したいとの思いがあり、パリの知り合いから当工房が大型ステンドグラスのアートを作っていると聞き、コンタクトしてきました。
専門学校ではガラスの絵付けを主に勉強し、ガラスのカットなどは習わなかったため、担当者から指導を受けながら課題をこなしました。「基礎がしっかりしているから仕事が早い」と担当者の評でした。滞在中は工房のテラスで行われたバーベキューパーティーでスタッフと交流を深め、東京メトロの駅に設置された工房製作のステンドグラス作品を見て回り、その素晴らしさに感心していました。「1カ月はあっという間でした。必ずまた来ます」と言って帰国しました。